米原市の柏原に渡部建具店というお店があります。「建具は取り扱っておりません。」のフレーズが印象的な渡部建具店は、じゃあ何を取り扱っているのか?お店は月に2,3回しか営業されていませんし、一体どんな生活を送られているのか?疑問は積もります。
時代は平成から令和に移り変わり、この頃からパラレルワークという言葉が注目を集めています。パラレルワークとは一つのビジネスに依存しない働き方の事で、複数の収入源を持つという特長があります。本業とは別に違う仕事をする「副業」とはまた違います。副業はあくまで本業がメインですが、パラレルワークは全てが同時進行であり言うなれば全てが本業です。そんな時代の先を行くパラレルワークを米原市で実現して生活していらっしゃるのが渡部建具店さんだったのです。
という事で、渡部建具店を経営する渡部秀夫・優ご夫妻にインタビューさせて頂き疑問をぶつけてきました。
渡部建具店を始める前のこと
本日はどうぞよろしくお願い致します。
はい、こちらこそお願いします。
実は正直な所、渡部建具店さんの事を最近まで知らなくて。知るうちに疑問に思う事がたくさんでてきたんです。
そうですよね。どうやって生活しているのか疑問に思う方もいらっしゃると思います。
恐らくですけど、私含めて周りの方々は渡部建具店さんって、この店しか見えてないと思うんですよね。個人的には渡部建具店さんって実は大企業なんじゃないかっていう印象がありました。
大企業!?それは面白い発想ですね。
ここのお店の販売業は事業のごく一部で、実は見えない所でたくさんの事業をされているのではないか…?そんな予想を立ててきました。今日はそんな謎に迫るべく色々質問させてください。
よろしくお願いします。
Q1.渡部建具店としてお仕事をする前はどんな事をしていたのですか?
実は音楽をやりたくて、音楽活動をする為に東京に住んでました。
音楽!?意外ですね。
ヘビメタとかあっちのジャンルだよね?
じゃぁ、楽器の演奏もされるんですか?
やりますよ。ギターなんですけどアコースティックギターより一回り小さいやつ…何て言ったかな?
ウクレレですか?
ウクレレではないんです。
じゃあ、ミニギターですかね。
音楽をやりつつ障害者自立支援の訪問介護従事者という仕事もやってました。
Q2.米原市へ帰ってくるきっかけはあったのでしょうか?
僕は元々自然が好きやったし、田畑で作物を育てる事もしたかったんですよね。米原へ帰ろうと思った時には僕の父母が介護状態だったんです。お父さんは半身不随、お母さんは認知症が始まってたんです。その時妻はベトナムへ赴任していて、帰ってくる時に東京に住むんじゃなくて田舎へ行きたいという希望もありました。そういう経緯から色々あって、ここ滋賀(米原市柏原)に帰ってきたんです。
米原市に帰ってきてからは渡部建具店を継ぐ形になったんですか?
いや、継ぐといいますか。今やっている事は僕らのオリジナルで始めた事なんです。父は本物の建具屋をやってましたから。建具っていう職人仕事は全国的に跡継ぎもいなくて廃れていってる仕事ですし、建具の技術の裏にある知恵を受け継いでいく事に興味はあったんですけど、その当時教えてもらうにしても父が教えられる体の状態じゃなかったんです。
そしてここの向かい側に建具屋の作業場があったんですけど、お父さんが半身不随になった事で放置されてぐしゃぐしゃになってしまっていたんです。じゃあ、何しよかという事になりますわね。
そうですね。
端からどこかの会社に務めるという気はなかったので。
でも生活していくには稼がなくてはいけませんよね。何から始められたんですか?
現金収入ですか?東京の頃にやっていた障害者自立支援の仕事を米原に帰ってきてからもいくつかもらっていました。東京でお世話になっていた事業者さんから「今度福岡へ行くから一緒に来てくれないか?」とか、そんな感じであったんですよ。今もやってますね。
妻は妻でデザインの仕事を自分でやってましたし、帰ってきた当初からやってたもんなぁ?
うん。
お店のリーフレットとか、結婚式のやつとか。
結婚式のウェルカムボードや、席札やメニュー表のデザインをやったり、よくある結婚式の動画を作ったりしてました。それがこっちに来てからの最初の仕事でしたね。
で、そういうお仕事を頂いたのもこっちから広告とかは特に打ってなくて、それまでにお世話になった人や知り合いの繋がりから頂いたものですね。結婚式のウェルカムボードのお仕事をくださった方も、僕たちがデンマークへ行った時に出会ったんですよ。
近隣の飲食店のリーフレットや、米原で行われるイベントのチラシのデザインのお仕事もやらせて頂きました。
帰ってきた当初は働くという事に対してただお金を稼げればいいとは思ってなくて、
お金ありきの考え方から全速力で逃げるような考え方でしたので、どうやって稼ぐかというのは本当に後回しです。自分たちが大切にしたい事をやってきたら、その対価としてお金はいずれ周ってくるだろう。というくらいの楽観主義でやってた頃もあるんです。
あとは非電化工房の藤村靖之さんという実業家の方がいらっしゃって、あの人の本で「月3万円ビジネス」という本があるんです。
月3万円程度の仕事だったら取り合いにもならないし、人が人を利用するような稼ぎ方ではなくなるし、1人でも作っていける仕事なので月3万円稼げる仕事をいくつか持つという趣旨の本です。その本を読んで、読んで終わりじゃだめなので実践しようとしたんです。自分たちなりに四苦八苦して実践し始めたのが、米原に帰ってきてからすぐに取り組んだ事です。就職先を探そうという気にはなりませんでしたね。
自分たちの暮らし、自分たちのペース、自分たちの人生設計は自分なりに決めていく方向で動き始めて、それが今も続いている感じですね。
マルチインカムという考え方ですね。
そうです。個人事業主として青色申告の方法を調べていると、2018年頃からパラレルワークという言葉が出始めてきました。それまでは副業の方が多かったんですが、パラレルワークとかパラレルキャリアの方が増えてきて、そういう人向けの確定申告ハウトゥーが出てきたのが2018年くらいからです。
※パラレルワークとは一つのビジネスに依存せす、複数の仕事を同時進行で行う働き方。
パラレルキャリアとかパラレルワークという働き方が自分たちの生活にマッチしたんですよね。
よく何のお仕事をされているんですか?と聞かれるのですが、答えるのが長ったらしくなるので大変なんです。聞いてくる人は例えば「教師やってます!」という明快な答えを期待していると思うんですが、それができないんです。今までの社会だったら簡単に返答できるじゃないですか。
はい、多くの人が職業は1つでしょうからね。
それで、何をやってるのかよくわからん人という事で落ち着くんです(笑)
チラシデザインやリーフレットも作られていると聞いて、渡部建具店さんってデザイン事務所でもあるんだ!と新しい発見がありました。
まぁ、いろんな側面がありますからね。
建具はないのに何故建具店?
以前、建具店という名前だから「建具直してー」みたいなお問合せがあったとか?
あぁー、ありますよ。結構あるよね。
固定電話に結構かかってくるよね。
うち黒電話なんですよ。昔からあるし捨てるのももったいないので。でもジリリリリリとしか鳴らないじゃないですか。ちょっとうるさいのが難点ですね。
Q3.建具店なのに建具はない、初めて見る人にとっては矛盾だと思うんです。何故この名前でやろうと思ったのでしょうか?
そこも含めて楽しんでもらえたらいいなと思いますね。
楽しみ!?
矛盾だからそんな名前だめだよーと言ってくる人は今の所いないですね。開業届を出す時に屋号をどうしようか?となった時にあれこれ話し合って考えたんですけど、名前ってどうでもいいよね?という所に落ち着いて。そういえば渡部建具店というお父さんのはんこが残っていたんですね。「あ、はんこそのまま使えるしこのままでいいじゃん。」という事から渡部建具店になったんですよ。
お父さんが築き上げてきた渡部建具店を守りたいという想いから…?
そんな大層な想いはなかったですが、今あるものを大切に使いたいという考えですね。
領収書とかも渡部建具店のものが残っていたんです。それもそのまま使えるしと思って。
妻がデザインしたショップカードや店舗ロゴ、ペーパーは後から作りました。
※お洒落な渡部建具店のロゴは優さんデザインのもの。
自分のイラストを印刷したオリジナルペーパーを便箋やラッピングに使ってもらうように作りまして、佐々木文具店(※)などに置いてもらってます。
※佐々木文具店は米原市春照にある文具店。
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夫のお母さんが趣味で水墨画をされていたんです。それようの半紙がたくさん残っていたんですね。しかもそれが割と上等な紙で。捨てるのももったいないので、それを活かすためにオリジナルペーパーを始めたんです。実はまだ一度も材料の紙は購入した事がないんですよね。
世間的にいうリユースというか、アップサイクルというか。街づくりでもそれ以外の事でも新しい事や物に目が向きがちなんですが、そうじゃなくて普通の人ならゴミとして捨てちゃうものを何かに使えるんじゃないか?という観点を大切にしたいという想いがあります。屋号も「渡部建具店」に決めたのもその考え方からきています。
私は県外から来た者ですが、初めて先代が作られてきた建具を見て素敵だなと思ったんです。建具店という名前だと、お店の建具に目を向けてもらえるのもあります。2階はイベントスペースとして使っていますが、そこも建具が素敵な造りになっているんですよね。先代が作られてきた建具も活かせるなと思って付けた名前でもあります。
このイラストは個性的で味のある温かな絵で良いですねー。
ありがとうございます。今までやってきたデザイン制作物からイラストがひとり歩きし始めて、それを見たお客さんがまた依頼をくださるという感じでちょっとずつお仕事に繋がっています。
お話を伺っていると、どの仕事がメインとかないんでしょうね。どれも本業みたいな感じで。
2人ともないかなぁ。
私はずっと美術をやってきたんですけど、美術ばっかりやっていると体がついていかなくなるんですよね。手と頭を使うことが多く、あまり体全体は動かさないので単純に健康を害するんです。そうすると美術もできなくなるので、バランスを取ろうとしたら色んな事をやった方が落ち着くんだなという事を実感しています。家族がいたら一つの事に集中するのはよくないなと思いますし。
それで稼げなくなった時はリスクでもありますしね。
渡部建具店で取り扱っているものとは?
Q4.渡部建具店で取り扱っているものは何ですか?
食料品に調味料、雑貨もありますね。ベースは環境と生産者に配慮した食べると体が喜ぶ食品・調味料、そして緊急時に非常食として使えるものを取り扱ってます。例えばこのパンだったら、添加物が使われていないにも関わらず賞味期限が半年くらい保つんですよ。そういった環境と生産者に配慮したものをうちでは置いてます。
1年くらい保つよ。
そう、1年くらい保つんです。普通日本で言うと非常食はカンパンでしょう。カンパンといっても添加物がいっぱい入ってるし、美味しくないなぁとか、子どもは食べるのかなぁ?とか思う所があって、でも探せば添加物が使われていない長く保つ美味しいパンがありましたよ。調味料についても凄くシンプルなんですよね。醤油も大豆と食塩しか使ってないとかね。そういう物の方が長持ちします。
うちで自然食品とか健康食品を扱っていると凄く健康に気を使っていると思われるんですが、多分順番が違うんです。何も考えずにでも生きていけるこの世界において自分がどれだけ責任を持って生きるかを考えた時、「安けりゃいい。」という考えで買っていたらその値段の裏側に潜む悪い環境が垣間見れるんです。安い賃金や悪い労働環境で働く人達が。
今の時代安い農作物ばかり手に入れてると、百姓の人たちが農作物を育てるにも農薬をたくさん使わざるを得ない状況に加担する事になるので、そんな事は嫌だと思うんです。そういう事まで考えて自分たちは生きていきたいと思っていて、この流れを変えて良い方向に持っていける商品を取り扱って販売しています。それが生産者に配慮した商品という事です。
それを販売していく事で、手にとってくれた人が「これ美味しいわ」と思ってくれたら口コミで広がっていくんです。健康食品なんて高いし興味ないという人にもアプローチできて広がっていったら生産者の方も生活していけるだけの循環を生み出せるし、そういった所に加勢していきたいんです。
中には海外製のものも見られますね。
オーガニック系のものを入手しようと探していると、海外のものが多かったりするんですよね。
instagram(※) で海外の写真が多く見られますが、海外へ行かれるのは仕入れの為ですか?
※hideo/yuさん(@watanabetateguten) • Instagram写真と動画
最近は仕入れを兼ねて行くようになりました。そこにある木のスプーンとかタイのバンコクの外れで仕入れてきたものなんです。
体に優しいものを扱っている卸サイトから仕入れていたんですが、海外の生産地から卸サイトの倉庫へ運ばれてきて更に日本の私たちの家まで運ばれてくるまでに凄く時間がかかりますし、たくさんのダンボールに入って送られてくるんです。それがとても嫌で。できたら全部の商品を自分たちが直接現地に行って仕入れられたら良いのですが現状それがまだ出来てない状況なんです。ちょっとずつでも自分たちで仕入れるものを増やしていきたいなと思っています。
まだ現在進行中の事業ですね。先程人との繋がり、縁で仕事を貰ってるという話をしましたけども、あの木のスプーンもタイの作家さんと知り合って顔の知った人の作品をここで販売しているんです。小麦粉だったら○○さん、野菜だったら○○さん、顔の見えるやり取りというのを大切にしていきたいと思っているのでそういう商品を増やしていきたいです。この場所が作品や食品が手渡しされていく場所になればいいなと思います。ただ売れたらいいというわけじゃないんです。
その商品が作られてきたストーリーというのもあると、また一つ魅力になりますね。
僕らが育ててきたお米も量り売りをはじめました。段々と販売にまわせる収量が得られるようになってきたというのが理由ですね。
仕入れに行くのも凄いコストじゃないですか?
うん、コストなんだけど…行ったほうがそれ以上の価値があると思いますね。
Q5.渡部建具店ってどんなお店ですか?
えー、難しいな。自分で考えてよ(笑)
私たちウリ文句を考えるの苦手なんですよね。私たちがやってる事を提示して、それについてきてくれる人がいるという状況なんです。
渡部建具店さんって、ここの体に優しい食品だけじゃないですもんね。
販売は他のやってる事と比べたらウェイトは低いよね?
うん、もっと手を加えていきたいけど日常が忙しくて手が回ってないという感じですね。
やっぱり大企業のように見えてきました。他に何をやってるんですか?
妻はイラストやデザイン、Web デザイン、そして一緒に農業、レンタルスペース業、民泊をやってますね。
普段暮らしの中で必要でやっている事をあえて言語化すると重々しくなっちゃうんですよね。
関係性の再構築という事もやってる事の一つだと思ってて、田んぼに関して言えば自然と人間の関係性の再構築、ご近所さんとの関係性の再構築、そういう事をやっているうちにメディアさんが取材に来てくださったりとか、関係性がどんどん重層化していくんですよね。
その感覚はわかります。私も「まいばらんど」の活動を始めてどんどん知り合いが増えていく中で、例えば渡部さんはあの人と知り合いだったんだとかどんどん繋がっていくんです。それであの人とあの人を繋げてあげたら面白そうだなと橋渡し的な役割もできるようになってきました。そしてまた、新しく知り合いを紹介して頂いたりどんどんご縁が繋がっていって面白いですね。
Q6.色んなお仕事をやるにも時間は限られていますよね?色んな事に手を出しすぎて全部中途半端になりそうな気がするんですが、どのようにバランスを取っているんですか?
取れてないのかも…。
私は2018年最初の頃から整体のお仕事もし始めて、それまではデザインのお仕事と建具店のお店をメインに考えていたんです。しかし、最近お店の方にかける時間が足りなくなってきて実は優先順位は低いんです。それでどうやって付き合っていこうか考えながらやっている状態ですね。
あぁ、じゃあお店での販売がなくなる可能性もゼロじゃないね。
えぇ!?
僕ら2人ともゆっくり店番していられる質じゃないので。
子どもが少し大きくなって離れられる時間が増えたので、整体の仕事のウェイトを上げ始めたんです。すると今までお店の営業日だった日曜日も出勤しなくちゃいけない事が多くなって、営業日どうしようかなと。
とりあえず土曜日営業にしたけど、じゃあ僕が土曜日ずっと店番でじっとしてられるかっていうとなかなか難しい。
仕事のスケジュールも子どもの成長に合わせてるので、常日頃変わっていきますね。
家の状況のバランスと、お客さんの事も考えつつ仕事の舵を取っていく感じですね。
営業日をどうするかというのは本当に悩ましい問題で、開けてたら初めてのお客さんが来てくれる時もあるし、全然来ない時もあるし難しいんです。
お店の営業はウェイトが低いと仰いましたが、では何がウェイトが高いのでしょうか?
収入的にはお店よりも民泊の方が大きいですね。ウェイトを高くしようとしたわけじゃなく、高くなってしまったんです。来てくださったお客さんに対してしっかり対応していったら、良いレビューを付けてくださるんです。それを見て来てくださるお客さんも増えていったんです。
そういう事だったんですね。色んな事をやっていくパラレルワーク的な仕事の方法は時代の先を行かれているなぁと思いました。
でしょ~(笑)一つの籠に卵を盛るなってやつですよね。
芸術一筋で歩んできた渡部優さんの仕事のこだわり
Q7.結婚前は芸術一筋という感じだったのでしょうか?
そうですねぇ。それはもう酷かったですよ。衣食住全てをないがしろにしてのめりこんでいたので、体がボロボロだったんです。そんな生活をやっていたので長生きはできないだろうと思っていたし、芸術で身を立てれば早く死んでもいいみたいに思ってました。(苦笑)
そこまで打ち込めたのは好きだったからですか?
拠り所が芸術しかなかったからかな。あの頃は作ったものを認めてもらうのが私の拠り所だったんです。
Q8.絵はいつから描き始めたのですか?
しっかり描き始めたのは中学生の頃からです。
元々子どもの頃から絵は好きだったんですか?
実はそうではないんですよね。昔から絵を描くと努力賞とかもらっちゃったりしたんです。描けって言われたら真剣に描いちゃうタイプでした。子どもらしいダイナミックな絵は全然描けなくて細かいことをチマチマやってるような子だったんですよ。それから褒められる機会が多くなってきて絵もいいなぁと思い始めて中学生からは美術部に入りました。美術部の先生が東京芸大の出身で油絵とか本格的な事を教えてもらえたんです。それが本格的にやり始めたきっかけですね。
外で走り回って遊ぶ方が好きだったんですけど、自然や遊び相手があんまりない環境で育ったので一人で何かする事が多かったのです。
そこから本格的に芸術の世界を目指そうとしたんですか?
そうですね。進路を考える時期にどうしようかなと思った時、東京芸大へという進路が美術の先生のおかげで見えてきたんです。目指してみてもいいかなと思って、東京芸大に行く前提で高校も選んでレールに乗っかろうと思ってたんですね。
東京芸大には無事入れて、それからはアートの世界で自分を売り出していこうと色んな所に作品を持っていって、ギャラリーと繋がって、アトリエを借りて、ギャラリー主催の企画展にいくつも参加して、と奔走してました。
その時には芸術方面の仕事をしていたのですか?
その時はしてなかったんです。自分の作品作りとお仕事は別で、Photoshop や Illustrator の Adobe ソフトを覚えて自分の技術や感性を活かせる仕事をしてました。
結婚してからは商業的に消化されるイラストのお仕事は嫌になっちゃって、頼んでくれる人のご縁だとか仕事の内容とかで仕事を選ぶようになりましたね。かなりわがままなデザイナーです(笑)
イラストを描かれる時はデジタルなんですか?それともアナログ?
※デジタルはパソコンで絵を描く事で、アナログは筆やペンで紙に絵を描く事。
えっと、アナログで描いたものをデジタルに取り込んで修正してます。
Q9.絵を描く時に心がけている事はありますか?
依頼主さんの人となりや想いをどれだけ込める事ができるかという事を考えていますね。あと自分が持っている技術や感性だけに頼らないという事を大事にしてますね。それに頼りすぎちゃうと面白くないものできちゃうので、自分でも驚きがあるような作品作りを心がけています。
あと私の場合は依頼主さんとしっかり対話をする時間を取らないと作れないタイプなんです。どういう物が好きだとか、何色が好きだとか、その方が大切にしている事とか、聞き取った上で制作に臨みます。
Q10.ご主人と出会われたきっかけは、お互い音楽とアートという事で惹き合う所があったのでしょうか?
ゲストハウスに住んでた時に出会ったんですけど、音楽とアートでコラボレーションできたらいいなと思っていたという事はありますね。ただ、それは今でもまだ実践していなくて子どもが大きくなったらそういう事もできたらいいなと思っています。
芸術の一線から結婚して米原市に引っ越されるのは凄く大決断ではありませんでしたか?
そうでもないんですよね。自分が今までやってきた芸術や美術に自分の生活が侵されてしまっていたんです。そんな芸術の世界から逃げたいとも思っていて、あえてそういう世界から離れたんですよね。今では米原に来て良かったと思っています。
米原にこんな凄いイラストレーターさんがいたという事に心底驚きでした。
Q11.先程整体のお仕事も始められたと仰っていましたが、芸術とは全く別方向ですね。
それが繋がるんですよね。精神的なものと肉体的なものってとても密接なんです。例えばパニック障害やうつのような精神的な症状が、整体で身体の方を整えることで改善したり。アートセラピーが医療現場等で取り入れられていたり。
Q12.何か PR したい事はありますか?
2019年5月31日から6月2日にかけてうちでうさとの服展というイベントをやるんです。僕たちが主催ではないんですが、うさとの服って結構ファンが多いみたいですよ。凄く丁寧に作られてます。
服展という事は、展示会ですか?
はい、展示販売が行われます。うさとの服ってそういう展示会のやり方で日本全国で販売されているんです。物は良いですよ。
3日間それぞれ飲食店の出店もあります。
うさとってそもそも何なんですか?
うさとの服のブランドオーナー、デザイナーの名前ですね。駐車場もありますんで、是非いらしてください。
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本日は取材のご対応ありがとうございました。
おわりに
渡部建具店の渡部ご夫妻はそれぞれ色々なお仕事手がけてパラレルワークを実現されていて、お話を伺って大変参考になる事もありました。渡部建具店さんは建具は取り扱っていませんが、言葉通りの意味ではなく一つのブランドだと思いました。
印象的だったのはただお金を稼げればいいわけじゃない、自分たちの大切にしている事をやっていけばその対価としていつかお金は周ってくるだろうという考え方。一つ一つのご縁を大切にする生活。今あるものを大切にして活用する事、食に関しては生産者の裏の背景まで気を配る生産者に配慮した考え方には感銘を受けました。そういう考え方を含め、渡部ご夫妻の生活、お店、人柄、全てひっくるめて渡部建具店という一つのブランドではないだろうか。そんな事を思いました。
体と生産者に配慮した食品や調味料を使ってみたい、それなら是非渡部建具店へ訪れてみてください。
お店情報は詳しくはこちら。
公式SNS
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お店情報
渡部建具店
住所:滋賀県米原市柏原871
営業時間:12:00~18:00
営業日:不定なので公式サイトをチェック
公式サイト:渡部建具店|滋賀県|