米原市出身の画家、西川礼華さんは日本画を専門とする画家として活動されています。経年劣化した古いものの美しさ、遺物が放つ美しさをテーマに絵画の世界を構築。
2016年には文化の向上発展に寄与し将来が期待される人に贈られる滋賀県次世代文化賞を受賞されました。新進気鋭な画家、西川礼華さんにインタビューさせて頂きました。
絵を書くきっかけから大学の事
一番最初は小学生の頃に友達と一緒に漫画の絵を模写してイラストを描くお遊びをほぼ毎日やっていました。家で描いたものを次の日に友達と見せ合ったり、中学生くらいまで続けていました。
高校生になってからは勉強に身が入らなくて、私は一体何がやりたいんだろう?と考え直したときに最初に出てきたのが絵だったのです。小さい頃からずっと絵は描き続けていましたし、美術系の大学に進学しようと考えるようになりました。
いいえ、この頃はまだ漠然と美術をしたいと思っていただけなのです。大学のオープンキャンパスや大学に入ってからも色々な作品を見るうちに岩絵具という画材に出会い、日本画の美しさに惹かれました。特に日本画家の山口華陽さんの作品を見て、自分も日本画を学ぼうと決意しました。
私が行っていた京都市立芸術大学では、最初の半年は細かい専攻を決める前に、色々な技法を学ぶ期間があります。半年を終えてから、日本画・洋画・版画に分かれて本格的に学んでいきます。私は岩絵具の美しさが決め手になって日本画を専攻しました。
画材・岩絵具について
岩絵具は鉱石を砕いて出来たものなのです。例えば水晶とかラピスラズリなど色々な天然の鉱石を砕いて出来た岩絵具もありますし、人工的に作られた岩絵具もあります。岩絵具の鉱物の美しさが好きですね。
岩絵具は膠(にかわ)と混ぜて使うのですが、凄く透過性があります。重ねれば重ねるほど綺麗なんですよね。静謐な美しさがあります。
私はキャンパスではなく麻紙(まし)と呼ばれる麻でできた紙に描いています。絹本やキャンパスに描かれる方もいらっしゃいます。
昔はペインティングナイフで重ね塗りして大分厚塗りで描いていました。それからガリガリ削ったり洗い出したりしていたんですよね。それからまた重ね塗りして…。筆で描く表現とは違う表現が出せます。場合によってはサンダーを持ち出したり…
そうなんです(笑)彫刻のように削ったりしてました。
岩絵具は鉱石を砕いた砂状のものが瓶に入って売られています。15gを1両として売られているのですが、この岩絵具を2両くださいというように量り売りで買います。岩絵具と膠、水を調合して筆で描いていきます。
そうですね。人工の岩絵具が登場してから色の選択肢も随分と増えました。
難しいですね。岩絵具と膠の配合を間違えると、剥がれて落ちちゃったりするんです。乾くのも遅いんですよね。
北欧の田舎の雰囲気がある建物です。旧湖東町はスウェーデンのレトビック市と姉妹都市として提携していた関係で建てられました。陶器や、木工、鉄工、ガラス細工とか色々な作家さんがいらっしゃいますので日本画以外の知らない世界に触れられるのが嬉しいです。
絵のモチーフや作風は遺物の美しさ
経年劣化した古いものや剥落したもの、遺跡から出土した遺物が大好きなんです。この美しさを岩絵具で表現できないだろうか?という事をテーマに作品を描いてきました。現在は、前述に加えて自然から感じた空気や言語のようなものをテーマに描いています。
大学時代は自然や植物が多かったですね。外でひたすらデッサンして、冬は南天を凍えながらデッサンしてました。でも自然の形を借りることから、自分の形に変化していかねばと思うようになりました。
そうですね。長い時間が物に与える影響により得られた経年劣化の美しさと、それを見た自分自身の感情や感覚も絵として表現するようになっていきました。
表現するためにこういう物を作り出したんです。花を布に包んで何ヶ月間か埋めて、経年劣化させたものです。花と土と黴の要素で定着した元々の花の美しさとは違う美しさがあると思っています。
はい、これも作品でありつつモチーフでもあるんです。これをデッサンし自然の写生と共に構成し直して岩絵具で作品を描きます。掘り返すと一度滅びを迎えた物が見る世界といいますか、滅んでいくうちに携えた経年劣化した物の表情を持ち美しさを放つ事が神秘的だなと思うんです。
ただ掘り返したものを模写するだけではなく、時間を経て、私自身を介し、感情や感覚を乗せて絵にしているという感じです。
ありがとうございました。
おわりに
日本画というと古風なイメージがあったのですが、西川さんが描く絵は日本風でありながらも新しさを感じる世界がありました。滋賀県次世代文化賞を受賞されたのも納得できます。個展も開催される事もあるそうで、是非個展で西川さんの芸術の世界に触れてほしいと思いました。
これからのご活躍も期待し、応援したいと思います。
関連サイト
公式サイト:西川礼華